( 新撰組 * 恋情録 )

 明かりが消された池田屋内に
 漂っていたのは、むせ返るような
 血の匂い―‥

 「 ぅ‥ッ 」

 あたしは思わず 手で口を覆った。

 ( 総司、どこ‥? )

 壁に片手を付きながら
 奥へと進んで行くけど、
 それらしい姿は見当たらないどころか
 玄関付近には人の姿さえ殆ど
 見当たらない。



 ――生きている、姿は。



 浅葱色の羽織りを血に染めて
 事切れている死体に遭遇したあたしは、
 その場にしゃがみ込んでしまった。

 「 ぁ‥ぅ 」



 視界さえぼやけてきたあたしには
 後ろから忍び寄る影の気配を
 感じ取る事など不可能。



 ヒュン!



 ――気付いた時には既に
 刀が振り上げられていて‥

 「 あ‥っ 」





 ズブリ。





 あたしはただ呆然と、
 刀身が体に沈み込むのを見ている
 ことしか出来なかった――。
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