( 新撰組 * 恋情録 )

























 ―――横から突き出された永倉さんの
 刀が、相手の体に沈み込んだ。

 「 カハ‥ッ 」

 途端に絶命し、倒れ込む長州藩士。

 「 大丈夫か、凜咲ちゃん?! 」

 「 永‥倉、さん‥ 」

 あたしは呆然としたままお礼を言った。

 「 気にすんな!‥でも、何で凜咲
  ちゃんは此処に居んだ?危ねぇだろ 」

 その言葉で、あたしは漸く我に返る。

 「 土方さんの部隊が、応援に
          駆け付けたんです 」

 「 本当か?!土方さん達の隊が
      来てくれりゃ、百人力だ! 」

 「 もうすぐ踏み込んで来てくれると
      思います。それで、あの‥ 」

 意を決して総司の居場所を聞くと、
 永倉さんは二階へと続く
 階段を指差した。

 「 総司の奴、二階に一人なんだ‥! 」

 それを聞いた瞬間、あたしは
 さっ と青ざめた。

 ( 総司‥! )

 「 あたし、様子を見てきます! 」



 一段飛ばしで階段を駆け登る。
 何度か転げ落ちそうになりながらも
 辿り着いた二階には、より濃く
 血の匂いが満ちていた。
 嫌な予感が、記憶の史実と結び付く。



 [ 新撰組一番隊組長 沖田総司は、 ]



 「 総司っ!どこ?! 」



 [ 池田屋での奮戦中―‥ ]



 一際血の匂いが濃く漂う
 部屋の襖を勢い良く開いた先に
 あたしが見たのは―‥



 [[ 激しく喀血し、病に倒れる ]]



 ――血の紅に埋もれ、
 意識を失っている総司の姿。
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