( 新撰組 * 恋情録 )

 俺の繰り出した斬撃は きっちりと
 受け止められ、再び鍔ぜり合いになる。

 「 ‥参ったな、鍔ぜり合いは苦手
  なんだよね。俺、小さいし‥さッ! 」

 ぐっと力を込めて宮部の刃を押し返し、
 素早く喉元目掛けて突きを繰り出す。

 「 良く言いおるわ。押し負けたのは
         こちらだと言うのに 」

 宮部はそれを上手く躱すと、
 反撃に転じた。

 ガキンッ

 「 ‥中々やるね 」

 その剣は確かに、鋭く重い。

 「 いい加減本気出さなきゃまずいかな 」

 「 ‥今迄のは遊びだったとでも? 」

 「 ご名答 」

 懐へ切り込むように間合いを詰める。
 それを避けた宮部の体勢が、
 僅かに崩れた。

 そして俺は、その隙を見逃さない。

 「 ‥こんなんじゃ、屯所での俺を
   見るのは難しそうだね、宮部鼎蔵 」

 喉元に剣先を突き付け
 不敵に笑ってみせると、
 宮部は悔しげな顔で俺を睨みつけた。

 「 ‥屯所でのお前と今のお前、
     本物はどちらだというのだ? 」

 「 ‥さぁね。君に答えてやる
            義理はないよ 」

 ――本当の俺、か。知らないよ。
 そんなもの。





 「 隙、あり‥! 」

 「 ?! 」





 ドカッ!





 ―――宮部は、俺の胸部を
 思い切り蹴飛ばした。





 「 カハ‥ッ?! 」

 蹴りの衝撃で、壁際まで
 吹き飛んだ俺が必死に顔を上げると、
 宮部は自らの腹部に刀身を当てていた。

 「 何‥して‥るッ 」

 荒い息でそう問えば。
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