( 新撰組 * 恋情録 )

 「 敵で有るお前の手に掛かり、
  命を落とすくらいなら―‥
  俺は、自分で生を絶つ!
  介錯不要‥貴様はそこで見ていろ! 」

 強い口調でそう言い切り、
 宮部は躊躇い無く 自らの
 腹を切り付けた。

 「 あああああああああああああああ!! 」

 「 な‥ッ、切腹‥?! 」

 宮部は暫くその場でピクピクと
 震えていたが、やがて静かに事切れた。

 ――血の匂いが、やたらと鼻につく。

 「 何で‥ 」

 ふらりと立ち上がり
 宮部の亡きがらの元へと歩み寄る。

 「 今切り付けられれば、負けるのは
      俺だったかもしれないのに 」

 ふらつく。

 「 絶対首を取るとか、大層な事
  言っておいて‥結局自害?
  ‥がっかりだよ、宮部、鼎蔵 」

 目の前が霞む。

 「 ぅ゙‥っ?! 」

 喉の奥から込み上げる、熱い何か。

 「 ごほ‥ッ‥! 」

 手の平を伝って零れゆく
 どろりとした感触のそれが、
 真っ白な月の光に照らされる。





 それは―‥毒々しい紅色の液体。
 宮部の腹部から 今もなお流れ出ている
 ものと、同じもの。





 「 ぐ‥っ 」





 ドサリ。





 自らの口から溢れたそれを
 呆然と見つめながら、俺は
 意識を失った。
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