( 新撰組 * 恋情録 )

( 第四想起 )


 翌日正午、あたし達は
 屯所へと帰り着いた。

 総司は未だに意識が戻らず
 微熱が続いていた為、隊士達が交代で
 背負いながらの帰還となった。



 「 皆さん、お帰りなさい 」

 微笑と共にあたし達を出迎えたのは、
 屯所残留組だった山南さん。

 「 ああ、ただいま 」

 総司を背負った土方さんが
 代表して挨拶を返す。
 と、山南さんの視線が 土方さんの
 背中へと移った。

 「 おや‥‥? 」

 訝しげに細められた眼鏡の奥の目が
 はっ と見開かれる。

 「 沖田くん?! 」

 勢い良く駆け寄って、早口に
 土方さんを問い詰める。

 「 一体何があったんです?! 」

 土方さんは一瞬だけ躊躇う素振りを
 見せたが すぐに山南さんを
 真っ直ぐに見据え直し、

 「 心配すんな。只の暑気あたりだ 」

 と告げた。



 土方さんは昨日から今まで、幾度と無く
 同じ質問を皆からされてきた。
 そして、いつも返すのは同じ答え。



 " 暑気あたり "



 ――間違っては、いない。

 確かに総司は池田屋の熱気にあてられ、
 脱水症状を起こして倒れた。

 故に今、直接彼を苦しめているのは
 確かに暑気あたりなのだから。
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