( 新撰組 * 恋情録 )

 ( 山南さんが、あんなに
       感情を露にするなんて‥ )

 時折隊士達と言葉を交わしつつ
 何事も無かったかのように食事を進める
 山南さんを見つめながら、
 あたしは思考に没頭していた。



 山南さんはいつ怪我を負ったんだろう?

 総司をすごく気にかけている
 みたいだけど、それは何故?

 剣を握れなくなった彼は、
 本当に新撰組に必要ないの?

 彼が放った

 「 早く目が覚めなければ、彼も‥ 」

 という言葉の意味は?



 ぐるぐる、ぐるぐる。
 疑問が渦巻く。答えは出ない。



 「 ‥さ‥‥凜咲! 」

 「 ?! 」



 はっと顔を上げれば、心配そうな
 顔をした平助が あたしを
 覗き込んでいた。

 「 大丈夫か?何か顔色悪いけど‥ 」

 土方さんや原田さん、斎藤さんなど、
 近くに座っている皆の顔が
 心配そうに曇っている。

 「 あ、大‥丈夫だよ‥? 」

 慌ててそう返したものの、
 まだ平助の顔は晴れない。

 「 でも最近凜咲、女中の仕事と
  総司の看病で忙しそうだし、
  疲れが溜まってるんじゃ‥
  ちょっと休んだ方が良いって! 」

 「 全然大丈夫だって!ほら、元気元気 」

 小さくガッツポ―ズをして
 にっこり笑ってみせる。

 「 でも‥ 」

 平助はまだ不安そうな
 顔をしていたけど、

 「 ほら、お味噌汁飲むでしょ? 」

 とお代わりを勧めると、

 「 ‥うん 」

 と漸く笑ってくれた。



 その後皆の心配合戦を何とか切り抜けて
 食事の片付けを終えると、
 あたしは真っ直ぐ部屋へと戻った。

 ―‥分からない事は、あの人に
 聞くのが一番だと思うから。



 「 ‥土方さん、入って良い? 」

 襖越しに声を掛ければ、
 黒いシルエットが顔を上げた。
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