( 新撰組 * 恋情録 )

 「 っ‥ちょ、ちょっと待って下さい! 」

 あたしは慌てて声を上げた。

 「 あたしは間者なんかじゃありません! 」

 あんまり幕末には興味無いけど
 長州と新撰組の関係や
 この時代に間者という、スパイの
 ような仕事をする人が居たことくらい
 知っている。 そして、間者である事が
 ばれた時、その人がどうなるのかも―‥

 「 証拠は?‥ある訳ねぇか。 」

 土方歳三は見下したように笑うと
 詰問口調になった。

 「 お前は何故、浪士に絡まれてた? 」

 「 何故って‥ 」

 " タイムスリップ "

 そんな夢みたいな事言ったって、
 信じてもらえるわけがない。
 本人のあたしでさえ、
 まだ半信半疑なのに‥

 「 おい。黙ってると本当に
      斬っちまうぞ。良いのか? 」

 ( でも、言ってみるしかない‥! )

 「 ‥今から話す事は、全て真実です。
  信じられないかもしれないけど、
  質問は全部聞き終えてからに
  してください。 」

 「 良いだろう。話してみろ 」

 ふっ、と鼻で笑うと
 土方歳三はあたしの目を
 真っ直ぐ見据えた。

 嘘を見抜く為なんだろうけど、
 正直美形にそうやって見つめられると
 なんだか話し辛い‥/
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