( 新撰組 * 恋情録 )
( 第五想起 )
「 ‥‥‥君はさ、馬鹿なのかな 」
――うっすらと目を開ければ、そこには
何故か総司の不機嫌な顔。
「 そ、うじ‥? 」
白く濁ってうまく回らない頭と
目の前の存在に戸惑いながら、
ぼんやりと体を起こそうとする。
「 駄目だよ。まだ寝てなきゃ 」
すると肩に総司の手が伸びてきて、
ゆっくりと布団に押し戻された。
「 何、で‥? 」
ぼんやりと問えば、それは
二人きりの部屋に良く響いた。
「 治りました。誰かさんが 風邪
引いて熱出してまでしてくれた、
随分と献身的な看病のお陰でね 」
答える声には、刺がある。
「 そっか、倒れちゃったんだ‥‥ 」
「 何他人事みたいに言ってんの 」
総司があたしの額を指で弾くと、
ぴしっ と小気味良い音が鳴った。
「 どれだけ心配掛けたか分かってる?
女中の仕事は只でさえ厳しいのに、
俺の看病まで一人でこなせるわけ
ないでしょ。どうしてそんな
無茶してまで、頑張っちゃうわけ? 」
呆れ、怒り、情けなさ―‥
色んな感情がごちゃまぜになった
声で、総司は言葉を紡ぐ。
口調は、あの夜のままに。