( 新撰組 * 恋情録 )
「 ごめんなさい‥っ 」
「 ‥だから何が 」
堰を切ったように感情が、
言葉が溢れ出す。
総司が危ないって事、知ってたのに。
思い出せなくて、間に合わなかった。
守れなかった。
これから先、総司がどうなっちゃうのか
だって、知ってるのに。
総司が剣を握れなくなったのは、
あたしのせいだ―‥!
次々とあたしの口から漏れる言の葉を、
総司はただ黙って聞いていた。
そして、全てを話し終えて息を切らす
あたしに ふと向き直ったかと思うと、
―――シャキン。
素早く鞘から剣を引き抜き、
あたしの喉元に当てた。
「 ?! 」
ひやり、と 冷たい金属の感触が
肌を伝う。
「 ‥俺がもう剣を握れないとか、
勝手に決め付けないでくれるかな 」
生憎まだまだ平気だよ? そう言って
不敵な笑みを浮かべると、総司は
刀を鞘に戻した。
「 ご、め‥ 」
あまりの事にあたしは声も出ない。
「 はい、これから謝るのも禁止ね 」
「 え‥ 」
ただ掠れた音が、喉から漏れる。
「 あんまり煩いと‥そうだな、
三回貯まったら口塞ぐから 」
了解? と人差し指を唇に添えて
悪戯な笑みを見せる総司に、
あたしは再び翻弄される。
「 ま、またそ―いうこと言う‥! 」
「 問答無用。良いから大人しく
してて。土方さん追い出すの
大変だったんだからさ‥君が
暴れたら、俺の努力が台無しなの 」
「 へ‥? 」
よく見れば、確かにあたしが
寝ているのはいつもの部屋で。
微かな墨の香りを、懐かしく感じた。