( 新撰組 * 恋情録 )
「 土方、さん‥ 」
そういえば、あの質問の答えは?とか
心配掛けちゃったかな、とか。
言われた途端に彼の事が
気に掛かり始めて、思わずもう一度
名前を呼ぶ。
「 土方、さん 」
もちろん返事が返ってくる
はずもなくて、それはただ
虚しく空中に溶けただけだった。
――何故か無性に、会いたい。
顔を、見たい。
あの悔しい位に整った顔で、唇で。
名前を呼んで欲しい。
『 ‥‥何て言うか君ってさ、
分かり易くて残酷だよね 』
総司の小さな呟きは、耳まで
届かないながら、あたしの意識を
彼に戻して。
「 え、ごめ‥何か言った‥? 」
「 ‥‥いや、別に。今一回謝ったね 」
「 あ‥! 」
馬鹿、と笑った顔が
何故だか少し切なげに見えた。