( 新撰組 * 恋情録 )

 「 さてと‥、本題に戻ろうか 」

 総司の顔が急に真剣なものに変わる。
 迫力に圧され、あたしは黙って頷いた。

 「 君ってさ‥ 」

 そこで一旦言葉を切り、総司は
 あたしの方に顔をぐっと近付ける。

 ――その距離、僅か5cm。










 「 ‥やっぱりお馬鹿さんだよね 」

 「 痛‥?! 」





 ―――僅か5cmの距離で、
 総司は ぱんっ とあたしの額を弾いた。

 「 痛っ‥いたたた?! 」

 途端に視界が潤んでくる。
 それを見た総司は一度
 満足そうに笑ってから、





 「 君さ、俺が君に守ってもらって
  嬉しいなんて、本気で思ってるの? 」





 目を細めてあたしを軽く睨んだ。



 「 え‥? 」



 だって。
 あたしがああしてたら。こうしてたら。

 総司は池田屋で喀血なんか
 しなかったんだよ?

 この先もずっと、奔放に
 剣を振るえていたかもしれないんだよ?



 震える声で、あたしは言う。



 「 ‥まぁこの先何が起きるのかはよく
  知らないけどさ、それはもう
  歴史の中で決まった、俺の
  人生っていうか‥運命な訳でしょ? 」



 対して総司は、凜とした声で答える。



 「 それは君に変えてもらうもの
  じゃないし、変えて良いものでも
  ないと思う。‥‥俺に歩ませてよ 」

 「 ! 」



 頭に電撃が走ったみたいに、
 思考が止まった。



 「 大体それを変えちゃったらさ、
  歴史も変わっちゃうかもしれないし。
  それってつまり、君が未来の世に
  生まれてこれないかもしれない
  ってことなんだよ?意味分かってる? 」



 未来は、過去の積み重ねで生まれる。
 もし少しでも過去が変わって
 しまったら、未来も変わらざるを
 得ない―‥もしかしたら変わる対象は、
 あたしかもしれない。
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