( 新撰組 * 恋情録 )

 「 まぁ歴史云々を抜きにしたって、
  女の子に守られて嬉しい男なんて
  はっきり言って居ないと思うよ? 」



 総司の言葉が、すとんと胸に落ちる。



 「 土方さん辺りなら、こう言うん
  じゃない?女は男の背に
  守られてれば良い、とかって。
  あの人クサい台詞大好きだしね 」



 『 約束だ。俺から絶対に離れるな。
   目の届かねぇ範囲に居られて、
   守ってやれる自信はねぇんだよ 』



 「 ‥‥言いそう、かも 」

 「 ぷっ、あははは! 」



 いつだってあの人は、大きな背で
 あたしを庇ってくれる。

 大きな手であたしを守ってくれる。

 鋭い漆黒の瞳であたしを
 見つけてくれるんだ。





 『 ‥また土方さんの事考えてるし 』





 あたしに聞こえない音量で総司は
 もう一度何かを呟く。

 「 ‥ま、そういう訳だから、君は
  大人しくあの人に守られてなよ 」

 そして " あの人に " の部分を
 強調してそう言うと、何故か少し
 不機嫌な顔をした。



 「 え、何で不機嫌なの総司 」

 「 別に?誰かさんが
        あまりに鈍感だからさ 」

 「 え、ごめんあたし何かした‥? 」

 「 別に。はい後一回ね 」

 「 あわわっ 」
< 97 / 117 >

この作品をシェア

pagetop