今でもキミを
「ほら!楓も分もしてくれてるんだよ!
早く手伝ってきな!」
どーんと勢いよく愛夢に背中を押され
あたしは席を立ち涙を拭い、大地君の元へ向かった。
「あの~…」
近づいて声をかけてももくもくと作業を続ける大地君。
(あ~あたしの苦手なタイプだ)
あたしは心の中で静かにため息をつき
もう一度声を大きくして声をかけた。
「あの!」
あたしがそう言うと大地君はバッと顔を上げ
あたしをジッと見つめた。
大きい目。
長いまつげ。
洗顔でもしているのかと思わせる、
もちもちそうな肌。
薄茶色に染まったサラサラの髪。
想像していた“大地君”とは大きく違い、
あたしの顔がカッと赤くなる。
大地君はホッチキスを机の上に置き、
もう一度あたしを見てふにゃっと笑った。
「大地瞬矢。学習委員だよね?よろしくっ!」
外見とはすごいギャップの大地君の幼い笑顔に
びっくりしたのかなんでかあたしの心臓が大きく脈を打った。
大地君の差し出された小さい右手に
あたしも同じように右手を置いた。
「あっあたし、井上楓!
なんとでも呼んで!よろしくね」
あたしがそう言うと大地君は
握っていた右手を離し、胸の前で腕を組んだ。
「ん~…楓ちゃん…かえっち!」
何を考え出したかと思えば、
すぐに顔がパァッと明るくなり
パチンと手を叩いてあたしにそう言った。
「かえっち??」
「そう!かえっち!呼び方♪だめかな…?」
不安そうな顔であたしを覗く大地君。
その表情にあたしの心臓がまたも大きく脈を打つ。
あたしは小さくプッと笑った。
大地君が「なんで~!?」と声を張り上げる。
なんだかおかしかった。