ヒーロー フロム ザ アトランティス





盛大なパーティーの席で、ジャックは初めて水泳以外に興味を示した。




メアリー・スー・テーラーは、自分が生まれる前から金メダルを取り続けてきたヒーローが、ウエーターのトレーから二つの飲み物を取り、こちらに向かって歩いて来るのを見て緊張した。



「黙って、僕に当てさせて!君は、僕が出た数多い映画の中の、どれかに出ていた大部屋女優さんだろ?いや違うな、スポーツ誌の美人記者さんだ!うーん、これも違うとなると、イリノイの田舎からはるばる訪ねてきた十何人目かの僕の実の妹。じゃなければただのファン・・・は、無いな。ここは招待客以外は入れないし。全部ハズレ?まいった、降参するよ。僕の透視能力もこれまでだ」



ジャックが喋っていた間、恥ずかしそうに首を横に振っていたメアリーは、飲み物を受け取ると口を開いた。


「あなたは他の選手のことなんてずっと眼中に無かったでしょうけど、これでも女子のフリースタイルの銅メダリストなんですよ。初めまして、メアリー・スー・テーラーです」




ジャックは一瞬驚き、そして礼儀正しく言った。


「これは失礼。えっ・・・とミス・テーラー、こんな華奢な体をしてらっしゃるので、選手でいらしたなんて想像もしなかったものですから。・・・ところで」



ジャックは一つ咳払いをした後で、すみやかに続けた。


「新しい飲み物と、静かに話せる場所はいかがです?」












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