ヒーロー フロム ザ アトランティス
ほどなく一人の男の子が、外科手術によって取り出された。
医師は、まだ人間として不完全な男の子を抱き上げると言った。
「アトランティスの北の外れでは、百年近く前処女航海で沈没した大型客船の乗客を大量に救助した。エラを付ける外科手術を施された彼らは、その後安全な暮らしを与えられたが、二度と地上に戻されることはなかった」
「オリハルコンで造った船だったなら、沈まなかったろうに」
「超金属だな。確かにな」
「ところで、何故地上に帰されなかったのですか?」
ジュニアとアンを連れてきた、若い二人の人魚の夫婦が医師に尋ねた。
「争いの絶えない地上に、アトランティスの高度な文明を利用されては困るからだ」
「この子はどうします?」
「未熟児で生まれたこの子は、地上では不利だが水中ではプラスになる。急速に水中適合進化するクスリを与えよう。私たちのように、何千年もかかってエラやヒレが付いて進化した完璧なミュータントのようにはいかないが、水中では自由に動き回れるはずだ」
医師の回答にジュニアとアンを連れてきた二人の若い人魚が一歩進み出て、言った。
「では私たちにこの子を育てさせてください。私たちは夫婦です。去年子供も生まれました。その子の弟として育てます」
そして12年が過ぎた。