ヒーロー フロム ザ アトランティス
それはさておいて、アトランティスでは明け方にコクの両親が、科学庁を訪ねていた。
「うーん、まさか逃げ出すとは」
長官は首をひねった。
12人の政府首脳が召集されて、緊急会議が催された。
「とにかく騒いでもラチがあかない。今後どうするか考えなくては」
「海中保安庁に救出を依頼したらどうか?」
「うかつに地上へ行ってはいかん、我々大人は長時間歩くことが出来ないのだ」
「防人班の保安官はどうだ?」
「ああ、海中保安庁防人班は、先祖帰りによって脚が退化したままの二足歩行ができる連中で構成されているからな」
「だがいくら彼等でも、地上では急速に皮膚が乾いてしまうぞ」
「変体していない子供にウオーターキャップをつけて送り込んだらどうか?」
「目立ってはまずい。あんなもの常に地上でつけているのは、カトリックの聖職者だけだ」
「いいや、ユダヤ教とかいう宗教の人々も確か似たようなモノを被っておる」
「アーミッシュの人々もだ」
「どうあれ子供なら平気だ。子供はいつもおかしな格好をしているものだ」
「だからワシは、進化薬を使うのは反対だったんだ」
「いまさら蒸し返しても、しょうがないぞ」
「祖父母の元へ行ったに決まっているのだから、慌てることはない」
「しかし、祖父母に出会った後で、また引き離すのは酷だ」
「だが、海底人が地上に長くいるのは危険だ。体の機能はもはやまったく違うのだ」
「ハクは地上人だ」
「いや、今はエラも水かきもあるし、皮膚も地上向きじゃない」
話は、ちっともまとまらなかった。