ヒーロー フロム ザ アトランティス
ひかるの部屋では、美知子が彼女に本を読んであげていた。
「ママ、パパ泣いてるかも」
「悪いことをした罰よ」
「でも、パパを嫌いにならないでね。ひかるも大人しくしないのが悪かったの」
「えらいわ、反省したのね」
ベッドの上で、ひかるは頭をかいて照れた。
「パパのお仕事大変なの?」
「そうね、再来月のオリンピックに水泳選手が着用する水着の最終仕上げが、上手くいってないらしいのよ」
「パパとママは、東京オリンピックで知り合ったんでしょう?」
「そうよ。私はまだ14歳で背泳とメドレーリレーチームのメンバーだったの」
「知ってるわ。日本に行った時ママのパパに聞いたもの。昔の日本人は、背は低いけど河童のように素早く泳いで、たくさん金メダルを取ったんだって」
ひかるは自慢げに言った。
「そうよ。だからママたちも物凄く期待されてたの」
美知子は観客の歓声を思い出していた。
そして4位入賞に終わった時の落胆のため息も。