ヒーロー フロム ザ アトランティス





ひかるの部屋では、美知子が彼女に本を読んであげていた。



「ママ、パパ泣いてるかも」



「悪いことをした罰よ」



「でも、パパを嫌いにならないでね。ひかるも大人しくしないのが悪かったの」



「えらいわ、反省したのね」



ベッドの上で、ひかるは頭をかいて照れた。



「パパのお仕事大変なの?」



「そうね、再来月のオリンピックに水泳選手が着用する水着の最終仕上げが、上手くいってないらしいのよ」



「パパとママは、東京オリンピックで知り合ったんでしょう?」



「そうよ。私はまだ14歳で背泳とメドレーリレーチームのメンバーだったの」



「知ってるわ。日本に行った時ママのパパに聞いたもの。昔の日本人は、背は低いけど河童のように素早く泳いで、たくさん金メダルを取ったんだって」


ひかるは自慢げに言った。



「そうよ。だからママたちも物凄く期待されてたの」



美知子は観客の歓声を思い出していた。



そして4位入賞に終わった時の落胆のため息も。
< 56 / 88 >

この作品をシェア

pagetop