ヒーロー フロム ザ アトランティス
美知子はしばし呆然としていたが、ころんころんした体格の洋一の肩越しに憧れのジャック・ミラーの姿を見つけると、喜々として叫んだ。
「ジャック・ミラーだわ!!南田さん!あなたもちろんご存知よね!往年の金メダリストの!私大ファンなの。あの、ちょっと失礼します」
美知子はそう言うと、すっ飛んで行った。
「くっそぉー、諦めないからなぁ」
洋一は美知子の姿を遠目にうかがいながら呟いた。
美知子と日本競泳陣の為に、洋一とヒノマルスポーツは競泳用水着を作り続けた。
その後二大会を通じ美知子の成績は入賞のみに終わり、彼女は引退を決めて全日本のコーチとして選手を応援する道を選んだ。
けれども願い虚しく、日本の競泳タイムは世界に比べてふるわなかった。
最初の出会いから20年、根気強く想い続けた洋一の愛が通じ、ついに美知子は彼のプロポーズを受けた。