天国からのメール
ポカンとした表情で、静かに携帯電話を開く。


『綾……、俺……』


『言わなくていいよ、聡。全部、聞いてた。』


『俺、なんか、ダサいな……』


『確かに、ちょっと執着しすぎてたかもね、聡……。でも、聡は私の為だって思って頑張ってくれてたんだよね。』


『うん。どうしても、成功した姿を綾に見せたくて……』


『ありがとう。嬉しいよ。でも、私は……』


『うん?』


『聡が楽しんで音楽やってる姿が、好きだよ。』


『綾……』


『無理に頑張ろう、頑張ろう、ってしてくれなくていいよ。精一杯楽しんで、聡。』


『ありがとう。』


客席に戻った聡は、竜太の耳元で言った。


「悪ぃ、竜太」


「いいよ、別に悪ぃことじゃねぇんだから」


「それでは、七組目のバンド、ILAST ROCK!」


そのMCの声でステージが反転し、メンバーが登場する。


「お、昨日リハーサル見てたんだけど、このバンドすごいぞ」


聡が言う。


「そんなに上手いのか?」


和樹が聡に聞く。


「いや、上手いとかじゃねぇんだ」


聡がそう言った瞬間、ステージからジャーンと言う楽器音が聞こえる。


ドラム、ベース、ギターが一斉に音を鳴らしている。
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