天国からのメール
『聡、短いよ。(笑)もうちょっと待って、今メール作ってるから。』


メールを見ると、携帯電話に向かって頷く聡。


「ありがとう……ありがとう」と呟く。


そして時計の針が五時五十分を指す頃、携帯電話が鳴った。


『聡へ
全国大会の演奏、本当に凄かったよ。聡たちなら、絶対優勝できるよ!でも、もし優勝できても、調子に乗らずに頑張るんだよ。そこからが本当の勝負なんだから。
さっきの演奏見てて、思った。やっぱり、私は聡の音楽やってる姿が一番好き。カッコイイもん。それに、何をしてるときより、音楽をしてる聡が一番輝いてるよ。いつも見てるから、絶対音楽を捨てないで。
今まで、本当に楽しかった。私、聡の彼女になれて、幸せ。これから辛いことや悲しいことがたくさんあると思うけど、頑張って。聡になら、乗り越えられるはずだよ。私は、いつも優しくて、素直な聡が好きだよ。これからも、いつもの聡でいてね。あと、早く彼女作りなよ。(笑)』


そのメールを、震える手で保存する聡。そして、メールを返す。


『綾だって、メール短いじゃん。』


『だってー。いざ書くってなると、何書いていいかわかんないんだもん。』


『綾……今まで、本当に、ありがとう。』


『私も楽しかったよ、聡。』


『元気で。』


『聡も、元気でね。』


そして、時計の針が六時を指した。


グッとこらえる聡。


今にも大泣きしたい。


でも綾が見ていると思うと、笑顔でいたかった。
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