天国からのメール
「綾……ありがとう」


天井を見上げ、涙を流しながら笑顔で言う聡。


涙を拭うと、聡は客席へと向かった。


客席は、すでに暗転していた。


まもなく、結果発表なのだろう。聡は席についた。


「おう、聡。遅かったじゃねぇか」


竜太が言う。


「あぁ、悪ぃ」


聡が笑って答える。


「あれ、聡?なんか、目真っ赤だよ?」


慎一が聞く。


「あぁ、ちょっとあくびが止まんなくてな」


聡が言う。


「余裕だなー、聡」


和樹がそう言ったとき、MCが再びステージに現れた。


「おまたせしました!ただ今より、結果発表です!」


その声に、観客全員がステージを注目する。


「全国大会では、三つの賞が贈られます。まず、お客様からもっとも投票があったバンドに贈られる、オーディエンス賞。そしてバンドとしての技術が高かったバンドに贈られる、奨励賞。そして本大会優勝バンドに贈られる、ティーンズ大賞!では、発表です。まずは、オーディエンス賞!」


ドラムロールが鳴り響く。


「ILAST ROCK!ステージへお上がりください!」


ワーッと言う声援に包まれ、ステージへ駆け上がるメンバーたち。


聡は横をチラッと確認した。


竜太、和樹、慎一は一言も言葉を出さず、ジッとステージを見つめている。


何かを話す余裕など無いのだろう。


聡も、いつの間にか緊張でいっぱいになっていた。
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