天国からのメール
「きゃっ！」


女性は小さく叫び声を上げて、身を屈める。キキー！とブレーキ音が響く。


自転車は女性の前で、間一髪で止まった。


「もう、気をつけてよ！」


女性は聡に怒鳴ると、再び自転車にまたがった。


「……ダメダメ、あさってには関東大会なんだ。それまでに事故って怪我でもして出場取り消しなんてことになったら、大変だ」


聡は頭に過ぎる言葉を消すように首を横に振ると、再び自転車のペダルを踏んだ。


３０分程走ると、練習スタジオが見えてきた。


聡はスタジオの駐輪場に自転車を停めると、透明ガラスの扉を開け、スタジオに入った。


中に入るとまずロビーがあって、そこには机や椅子が不規則に置かれている。


壁にはポスターやチラシが適当に貼っている。


聡はロビーの奥にある『練習Ａスタジオ』と書いた扉を開けて、中に入った。


中にはもうすでにメンバーが全員いて、個々の楽器のセッティングをしていた。


「おう、聡」


入ってくる聡に気づいた竜太が言った。


「おう、皆。じゃあ、練習始めよっか」


聡はそう言ってドラムセットに座ると、軽くセッティングをしてスティックでカウントをとった。


「ワン、ツー、スリー、フォー！」


爆音と同時に曲が始まる。


息はピッタリ。確実に曲をこなしていった。
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