天国からのメール
練習が終わると、ロビーに集まって軽くミーティングをした。


「今日もよかったな」


和樹が言う。


「うん、関東大会優勝間違いないんじゃないの?」


慎一が続く。


「……あぁ、今のところ、上出来だな。でもあと練習は明日しかない。浮かれてないで、頑張ろう」


聡がそう言うと、和樹と慎一は「おう」と答えてスタジオを出た。


聡と竜太はお互いの家が近いから、大抵練習終わりは一緒に帰っている。


二人は自転車にまたがると、ペダルを漕ぎ出した。


「……聡」


しばらく走っていると、竜太が突然真剣な面もちで口を開いた。


「うん?」


「今日のお前、リズムがあんまりよくなかったな。どうした?」


「えっ……」


聡はドキッとした。リズムがよくなかったことは、少し自分でも気づいていた。


「お前、まさか……また綾ちゃんのことに気がいってるんじゃねぇだろうな?」


竜太が聡を見つめて言う。


「……そんなわけねぇよ。去年の失敗は繰り返さねえよ。ただちょっと、考え事してただけだ。安心しろ」


聡がそう言うと、長い沈黙が漂った。そして、竜太が口を開いた。


「……わかった。信じてるからな」


竜太はそう言うと、聡と別れて自分の家の方向へと帰っていった。


去年のミス……それは、綾のことだった。
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