天国からのメール
本来の実力なら、関東大会は受かっていたはずだった。


しかし綾に面影がよく似た人を見つけてしまい、本番直前になりどうしても気になってしまい、よそ見をしてフレーズを一テンポも間違え、落ちてしまった。


それ以来、聡はもう二度と大会中は綾のことは考えないと心に誓っていた。


聡は無心で自転車を漕いだ。


竜太と別れて5分程で自分の家に着くと、聡は自転車を停め、扉を開けて中に入った。


「あれ……」


聡は玄関の壁にもたれかかった。


「あさってが関東大会だっていうのに……むしょうにあの婆さんの言葉が気になってる……」


聡は心のどこかで、なぜか綾に会えると期待してしまっていたのだ。


もう、帰ってくるはずがないのに……


「バカバカしい、ヤメヤメ!」


聡は二階の自分の部屋に駆け足で行くと、気晴らしに漫画を読みあさった。


漫画は意外と面白くて、20分程読んでいると、いつの間にか気は紛れていた。


そして午後の9時を回る頃、聡の運命を変える一通のメールが届いた……。


ピピピピピッ


携帯電話が鳴る。


「ん?誰だ?」


聡は携帯電話を開くと、受信メールを確認した。


メールを開いた瞬間、聡の心臓がドクンと音を立てた。


「え……ありえねぇ……」






メールの差出人は、『綾』と書いていた。
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