天国からのメール
聡はさらに俯いて言った。


「そんなこと、できるわけないでしょ?変な夢なんか見てないで、いい加減しっかりしなさい」


聡子はため息をつきながら言った。


「わかってるよ……」


聡も大きなため息をついてから言った。


聡は今バンドを組んでいて、ドラムを担当している。


遊びではない。真剣にプロになりたいと思っている。


そのために高校三年間、親に内緒で大学受験の前日も練習に明け暮れた。


ライブの量も半端無い。月に八本以上のライブをこなし、バイト代は全て楽器、機材に消えているのだ。


相当な音楽的技術も持っているのだが、いまいち芽が出ない……


レンジがピーッという音と共に、聡は肉じゃがを取り出し、内面が水滴の白い霧で覆われたラップを指先でサッとめくると、箸を取ってじゃがいもをつかみ、口に運んだ。


そのとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。


「はーい……あら、竜太君」


聡子が玄関のドアを開けると、そこには坂本竜太が立っていた。聡のバンドのボーカルだ。


金髪の短い髪が特徴的な、いかにもワルガキそうな顔立ちをしている。


「あ、こんにちは。おい聡、そろそろ行こーぜ!」


竜太は聡子に軽く頭を下げると、聡に大きな声で呼び掛けた。


「お、竜太か?来るの早ぇなぁお前」


聡はじゃがいもを頬張ると箸を置き、茶色のパーカーを羽織った。


「早いってお前、今日が何の日だかわかってんだろうな?」


「もちろん」
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