天国からのメール
十分程歩くと、会場が見えてきた。去年同様、変わりはない。


「今年こそ、突破するぞ」


竜太の言葉に、三人は頷く。


四人は裏口から中に入ると、地区大会のときのように自分たちの控え室を探し、中に入った。


中ではすでに他のバンドメンバーが腕鳴らしにギターを弾いたり、スティックを振っている。


慎一は鏡の横にある『WORLD LINE様』と書かれた弁当を手に取り、竜太、和樹、聡に手渡した。


聡は弁当を食べながら、綾に一通だけメールを送ることにした。


『綾、このメールに返事はいらない。綾からメールがきたら、またメールしたくなる。大会が終わったら、すぐメールする。見ててくれ、俺の成長した姿を。』


聡はメールの送信確認をすると、携帯電話の電源を切った。そして、左ポケットに入れた。


そのとき、大会スタッフが控え室に入ってきた。


「ではこれより、大会に出場する順番をくじ引きで決めたいと思います。それぞれの代表の方、お集まりください」


その声で、各バンドから一人ずつスタッフに集まる。聡のバンドからは、竜太が行った。


関東大会、全国大会はこうしてくじ引きで順番を決める。


最初の出場者は緊張したり、最後は他のバンドを見てからの演奏でプレッシャーがかかるなどがあるため、少しでも公平にするためだ。


「WORLD LINE様、一番です」


戻ってきた竜太は両手を合わせて一礼した。


「ごめん!いきなりだ」


別に順番なんて関係ねぇよ」


和樹が言う。
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