天国からのメール
聡は竜太にそう言うと、玄関に置いてあったスティックを持った。


「行くぞ」


二人は家を出ると、駅に向かって歩きだした。


「聡、親父さんは?」


「昨日から北海道に単身赴任だよ。それより竜太、お前忘れ物とか無いよな?」


聡が竜太に聞く。


「当たり前だろ、今日だけは念入りに確認したよ」


「本当かよ、お前いつもそれで財布とか忘れてるだろ」


「あ、財布忘れた」


「マジかよ……」


竜太は上着とズボンのポケットをポンポンと叩いて確認するが、やはり無い。


「しょうがねぇなぁ、電車賃くらいは貸してやるよ」


「いや、本当に確認はちゃんとしたんだって」


「はいはい」


二人は駅に着くと、聡が二人分の切符を買ってホームへ向かった。


ホームには、ソフトのギターケースを持った男が立っていた。


「よう、聡、竜太」


右手を上げ、二人に挨拶する男の名は明坂和樹。聡のバンドのギターを担当している。


茶色のパーマで背が高く、気だけは人一倍強いが、ギターの腕前はそんなに良くない。


「和樹、早ぇなお前」


竜太が言う。


「当たり前だろ、遅刻したら大変だからな」


和樹は堂々と笑って答えた。


「あれ、慎一は?」


聡が言う。
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