天国からのメール
「とにかく、練習の時間まで待ってくれ。そのとき、会って話そう。じゃあ、また後でな」


「わかった……」


電話を切る聡。するとすぐに綾からメールがきた。


『聡。慎一君、やめたいなんて言ってなかったよ。』


『言ってたよ。』


『ううん、慎一君は「やめたい」じゃなくて「やめるかも」って言ったんだよ。』


『同じことだろ。』


『違うよ。やめるかもって……まだ迷ってるってことだよ。』


『うーん……』


『全くプロ志向じゃないのに、迷ってるっておかしくない?何を迷うの?慎一君は、なんでやめるならやめるって、はっきり言わなかったの?』


『言われてみれば、そうだな……どういうことだろ……竜太の言うように、本心じゃないのか?』


『私にも、本心じゃないように感じた。将来への不安だって、自分に言い聞かせてるような感じがした。多分……今すぐバンドを取るか、何かを取るか決めないといけないことがあったのよ。』


『なんだよ、それ?』


『わからない。でも、聡。わかってあげて。慎一君は今、迷ってるよ。正しい方向へ導いてあげて。』


『うん。でも、何をどうやって……』


メールを繰り返しているそのとき、携帯電話の液晶の右上に表示された時刻をチラリと見た。


二時十分。そろそろスタジオに出発する時間だ。
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