天国からのメール
「やっぱ慎一がいないとスカスカだねー、なんか」


両手を後頭部に当て、天井を見ながら竜太が言った。


「慎一のヤロー、この大事な時期に風邪なんて……何やってんだよ」


少し怒りぎみの和樹。


「まぁ、無理に練習に来て本番まで引きずられてもなんだし……たまにはいいんじゃねぇ?」


竜太が少し笑って言う。


「まぁ、それもそうだな」


それに答える和樹。


「じゃ、明日も同じ時間に練習だ。そろそろ帰りますか」


竜太の言葉をきっかけに、三人は楽器を持ってスタジオを出て、自転車にまたがった。


「じゃあな、和樹!」


竜太が手を上げて言う。


「おう!」


そう言うと、和樹は自転車を漕ぎ出した。その場に残る竜太と聡。


「聡……お前、あれから一言も喋ってねぇじゃねぇか」


「……え?そうだっけ?」


「一人で暗い顔しやがって」


「だってよ……」


自転車を漕ぎ出す二人。


「聡……考えても、仕方ねぇよ」


「わかってんだけど……どうすんだよ、大会?」


「だから、慎一を信じるしかねぇって言ってんだろ」
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