天国からのメール
ひょっこり顔を出した竜太が言う。「おう」と返事をすると、聡はスタジオの中に駆け足で入る。


そのとき、綾に一通だけメールを送った。


『今夜、練習が終わったら慎一に連絡してみる。みんなで待ってても、何も始まらない。』


「よし!」


気合を入れた聡は、携帯をポケットにしまってスティックカウントを取る。


練習中は他のことを一切考えず、曲に集中した。


練習が終わると、いつも通りロビーに集まってミーティングをした。


「今日の聡、よかったなー」


「おう、まるで関東大会のときみたいだった」


竜太と和樹が口々に言う。叩いてる側としてはいまいち実感はないが、聞いてみれば相当な違いなのであろう。


「慎一、明日は来るといいなー」


「そうだな」


竜太と和樹の会話が続く最中、聡は携帯電話を開いた。綾からメールがきている。


『でも、慎一君に何て言うの?』


それに返信する聡。


『まぁ、見ててくれ。』


と、その一言だけ送った。「じゃ、また明日」という竜太の言葉で、いつものように帰路につく三人。


「じゃあな」


「おう」


和樹を見送ると、聡は竜太の肩を叩く。


「なんだよ?」


「今から、慎一に連絡してみる」


そう言って先に帰ろうとする聡。


「おい、何て言うんだよ?」


聡の背中に竜太の声。
< 69 / 125 >

この作品をシェア

pagetop