天国からのメール
父の意外な言葉に返すことができず、諦めて帰ろうとする聡。


玄関の扉が閉まったことを確認すると、聡は裏口へ回って壁伝いに屋根に乗り、二階にある慎一の部屋の外側にきた。


「諦めるかよ」


そう呟き窓をコンコンと叩く聡。部屋の明かりはまだついている。


もう一度叩こうとしたとき、カーテンが開いた。


「わっ!」


思わず声を上げて驚く慎一。


聡は自分の口元に人差し指を当て「シーッ」と言うと、ジェスチャーで開けてくれと伝えた。


慎一は躊躇いつつ、しぶしぶ窓を開けた。


「……どうしたの?」


慎一は部屋の椅子にゆっくりと腰をかけた。


「いやー、お前の親が、お前に会わせてくれなくってさー」


そう言いながら靴を脱ぎ、中に入る聡。


「僕が言ったんだよ……もう寝てるって伝えてくれって……」


「そうか。……何で俺を避けるんだ?」


窓を閉めると、聡はその場に座り込んだ。


「別に避けてるつもりはないよ。疲れてたから、本当にもう寝るところだったんだよ」


そのとき、慎一の格好に目がいく。


「お前……なんだよ、その格好?」


慎一は、スーツ姿だった。ネクタイを取り、上着を適当に置いてある。


「え……これは……」


動揺を隠し切れない様子の慎一。


「……もう仕事でも探してんのか?」


「まぁ、そんなとこ」


苦笑いする慎一。


「切り替え早いな」
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