天国からのメール
「……わかったよ……」


靴を履き、再び窓から外に出る聡。


窓を閉め、カーテンを閉める慎一。


それと同時に、部屋からは「どうしたんだ?」「なんでもないよ」という会話が聞こえてくる。慎一の父が入ってきたのだろう。


聡は自転車にまたがり漕ぎ出すと、綾にメールを送った。


『やっぱり、慎一はバンドをやめなきゃいけない理由があるよ。それも、本心じゃない。部屋を見て、わかった。』


『部屋?』


『まず、机にこぼれたコーラ。いくらいい加減でも、大の虫嫌いな慎一からしてあれは考えられない。前に話したことがあったんだけど、虫が沸くことを極度に嫌ってたからね。そんなこともどうでもよくなる程のことがあった。そう考えると、クローゼットの凹みも慎一のストレスによる一撃だと考えられる。』


『何があったんだろ?』


『それはわからないけど、精神病にでもかかってない限り、慎一の態度から見ても、これはもう不本意でバンドをやめなきゃいけないことからきてるストレスの行動としか考えられないよ。』


『そっか……』


『唯一のヒントは、スーツだったってことぐらいかな……それも、あれはリクルートスーツ。結婚式とかで着るスーツじゃない。』


『じゃあ、親に反対されて強制的にバンドをやめさせられて、就職活動してるってこと?』


『俺もそう思った。とりあえず、竜太に連絡するよ。』


そう送ると、聡は竜太に電話を掛け、綾に伝えたことをそのまま伝えた。
< 74 / 125 >

この作品をシェア

pagetop