天国からのメール
しばらく歩くと、会場が見えてきた。


小さな白い建物で、大きく『地区大会』と書かれてある。


四人は会場に入ると、階段を上がって二階へ向かった。


階段を上がると廊下が一本だけ真っ直ぐあって、その壁には規則的に扉が並んでいる。


扉の一つ一つに楽屋A、楽屋B、楽屋Cという張り紙があって、聡達は『WORLD LINE様』と書かれた楽屋Aに入った。


中に入ると五組程、他のバンドがいた。


この大会は全国大会以外、楽屋は五、六バンドの共用となるのだ。


聡達は適当な場所に楽器を置くと、イスに腰をかけた。


そのとき、楽屋の中にいた他のバンドのメンバーの、黒髪のキレイな女の子に聡の目がふと留まった。


「あれっ……」


「ん?どうした、聡?」


竜太が聡に気づいて言った。


「……」


「おーい、聡?……あれぇー、何?もしかして、惚れたの?」


聡の目線に気づいた竜太が、ニヤニヤしながら言う。


「綾に、似てる……」


聡はポツリとそう呟いた。


「え?」


竜太はその女の子をじっくりと見ると、再び聡に視線を向けた。


そして、聡の胸ぐらをつかみ寄せ、ボソボソ声で言った。


「おい、いい加減目ぇ覚ませよ。去年と同じ失敗する気かよ!去年の関東大会のときにも綾ちゃんに似てる子がいて、それに気持ちがいってフレーズミスしたんだろ?いいか、もう綾ちゃんは……死んだんだよ。あの子は、似てるだけだ」
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