夢中遊泳、その先に君


ヒロイチとは連絡が途絶えたまま、年が明けた。

2012年。言いそびれた、明けましておめでとう。

ヒロイチはどうしているだろうとぼんやり思いながら、おせちを食べた。

普段はめったに食べないかずのこの粒が、プチンプチンと口の中で弾ける。おめでたい感触なのに、ちっともおめでたい気分になれない。


…わたしから折れなきゃ、ヒロイチはきっと折れない。

ヒロイチは素直だけれど、案外意地っ張りだ。

いじけるということはそれも、素直のうちに入るのかもしれないけれど。


おせちを満喫してからは、家族で初詣に行って。

おみくじは引かなかった。もし悪い結果だったら、今はあまり笑えない気がしたから。

その帰りに、偶然自転車屋さんを通りかかった。

ガラス張りの向こうをのぞくと、後付け用のライトが売っているのが見えた。

自転車の胴体にはめ込むだけの、簡単なもの。

そのとき頭に浮かんだのは…頼りなげな
、ライトの色だった。


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