夢中遊泳、その先に君
…ヒロイチの自転車にピッタリだ。
そう思ったら、おもわずライトをレジまで持って行っていた。
今年最初の買い物。そうして買って、手の内にしてしまったら、もう無性にヒロイチに会いたくなった。
家族に出かけてくると告げると、わたしはヒロイチの家へ息をはずませて向かった。
「…明けまして、おめでとう」
玄関のドアからいきなり現れたわたしに、ヒロイチはとても驚いた顔をしていた。
チャイムを押して出てきたのがヒロイチということに、わたしも少し驚いた。
ヒロイチは一度視線をそらして、ぶっきらぼうな声で「おめでとう」と呟いて。
機嫌が悪そうな声。でもヒロイチの耳は、ほんのり赤く染まっていて。
…こういうところが、好きだ。すごく。
わたしが仲直りをしにきたことがうれしくてうれしくてたまらないのに、必死で平然さを気取ってそれを隠そうとする。
ヒロイチのそういうところ、すごく好きだ。
ヒロイチはしばらく黙っていて。でもわたしが何か言う前に、口を開いた。
裏庭を、ゆっくりと指差して。
「…買ったんだ。さっき、お年玉で」
「えっ」
「自転車。……………乗る?」
うん、と頷く前に、肯定の笑顔がこぼれた。
ヒロイチも少し笑って、ホッと息をこぼした。