夢中遊泳、その先に君
その日から、俺はまともにアカリの顔を見ることができなくなってしまった。
他人から見てもわかるくらいに好きという気持ちが溢れ出ていたことは、当時の俺にはとてつもなく恥ずかしいことだったのだ。
「ヒロイチ」
明らかに態度がおかしいであろう俺に、アカリはいつも通り明るく声をかけてくれた。
そっけないながらなんとか返していたものの、放課後、偶然友人と一緒に居るところにアカリと出くわして。
「ヒロイチ、もう帰るの?」
笑顔で問いかけたアカリの隣を、足早に通り過ぎた。
俺はもう恥ずかしくて、周りの目が気になって、心臓がねじれたような気持ちになって。
アカリをはじめて、無視してしまったのだった。
そのことがあってから、アカリの方から声をかけてくることはなくなった。
アカリがどんな表情をしているかはわからなかった。俺も目線を合わせなかったから。
本当に些細なことだ。
でもそれが広がってしまった今、どうやって補えば戻せるのか、俺にはわからなかった。
ちょうどその頃、初めての席替えが行われた。
真鍋、明加。あいうえお順という縛りだけで、並べられていた俺たちの席。
俺が先に。アカリが後に。それぞれ引きに行った、四つ折りにされたくじ。
アカリは左から2列目の4番目。俺は右端の3番目の席だった。