夢中遊泳、その先に君
「じゃ、行ってくるから」
夏は夜でも暑さが残るのだと、玄関を出て思った。
溢れんばかりの蝉の鳴き声と共に、やってきた夏休み。
残り日数は減っていくのに、減らない宿題。
そんな夏休みが終盤にさしかかった今日、地元の祭りに行こうと、友達たちからメールが入ったのだ。
男だけで夏祭りかよ。
そう言って笑ったけれど、もう少し夏休みを満喫したかった俺は、その夏らしい誘いに乗ったのだった。
履き潰す手前のサンダル。
祭りの行われている広場へ向かう道中。
次第に人が増えていき、比例して空気は熱くなる。
道行く人たちの中には、浴衣を着た人たちも多くて。
普段の光景が薄らぎ、どこか違った場所に来たのかと思わされた。
この夏でずいぶん削られてしまったサンダルの底を引きずるようにして、ふと考える。
アカリ。
…もし、アカリだったら。
きっと白い浴衣が似合うだろうと、そう思った。
すごく見てみたいと思う気持ちに加えて、胸の奥に錘が落ちる。
休み前の席替え以来、アカリとは全く繋がりを持てていなかった。