夢中遊泳、その先に君


―2月6日未明、××交差点でトラックの後輪に巻き込まれ、18歳の高校生、明加アカリさんが死亡しました。

―18歳女子高校生、トラックに巻き込まれ死亡

―アカリ。交通事故で、即死だったんだって。


淡々と読み上げられるニュースと、新聞の見出しと、行き交う噂話。

そのどれもが短くて、淡白で、真実を語るにはあまりにもあっけなかった。



「…学校に行くのは、落ち着いてからでいいからね」


母さんはそう言って、俺の部屋のドアを音がしないように閉めた。

閉め切られた空気は、不純物だらけだ。
肺の奥が気持ち悪い。


─落ち着いてからでいいからね。


それは裏を返せば、数日すれば元通り学校に行けという、強制の言葉に聞こえなくもなかった。


さすがに換気くらいはしようと、カーテンをめくり窓を開ける。

途端に手の甲に触れる、冷たい水滴。

…外は雨だった。

ざあざあ降りではない、しとしとと降る雨。

落ちるというより地面を濡らす作業をしているようなそれは、なぜか寂しさそのものを表しているように思えた。


昨日から雨は降り続いている。


アカリの葬儀も昨日、雨の中行われた。


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