シャッター
「べつにあたしじゃなくてもいいでしょ?」


光希が言うと朝飛は首をふった


「それがあかんねん。理由はわからんけど、今はあんた、撮りたいねん」


光希は朝飛の筋の通らない理由に顔をしかめた


そして遠回しに断ろうとする


「でも、急だし、あたしそういうのよくわからないから。あとどういう写真なのかもわからないし…」



「わかんなくてええよ。俺の言う通りにしてくれればええ」


そう言われても朝飛は一向に依頼を引き受けるつもりにはならなかった

言う通りにしろ…だなんて何されるかわかったもんじゃない


もしかしたら危ないことやらされるんじゃないと光希は怖くなった



「ごめん、やっぱりできない!」


光希はそう言って、用があると言って駅前の本屋に駆け込んだ


そうするとさすがに朝飛はついてこなかった


光希は本屋の中に入り、ため息をついた


走ったせいで弾んだ息を整え、本棚の前で止まる


何分かここで時間を潰そうと思った


適当に棚からなにか本を取り出す


気づくとここの棚のコーナーは光希が普段立ち寄る漫画や雑誌のコーナーではなかった


しかし混乱している光希にはどうにか気を落ち着かせたくて、なんでもいいから急いて手にとった本のページをめくる

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