未タイトル


立ち尽くす私に痺れを切らせ 山岡がこちらへ歩いて来た。



「沙斗梨〜どうしたんだよ?」



私の目の前まで来て



一瞬の瞬間だった。





顔を上げた私に 山岡は
すかさず唇を重ねた。



何の感情もこもってないキス



だけど感触だけは嫌なくらいリアルで

気付けば私は山岡を突き飛ばし そのまま逃げるように駆け出していた。



慌てて靴を履き ひたすらに走った。



山岡が追いかけて来ないか怖くて 何度か後ろを振り返ったが

そこに彼の姿はなかった。


上がる息を整え、私はその場にしゃがみ込んだ。



「はあ…っはあ…」



忘れられない あの感触


唇が触れただけなのに 鳥肌が立った。



気持ち悪い



汚ないあの部屋と 私に迫ってくる山岡のあの表情…。



思い出すだけで 体が震えた。



最悪


さいあく



サイアク…






ファーストキスだったのに……。



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