白銀の女神 紅の王
やっぱり私に微笑んでくれたんじゃなかったんだ…
妹を抱き上げ微笑む両親に、暗い闇の中で立ち尽くす。
すると、お互いにその場から動いてもいないのに、どんどんと両親との距離がひらいていく。
『ッ……!待って…ッ。お父様!お母様!』
離れていく父と母を追いかけるように一生懸命走るが、いくら走っても距離が縮まらない。
『置いて……いかないで……』
あの日言えなかった言葉を大きな声で叫ぶ。
『もう能力は使わないから……ッ』
頬には一滴の涙が伝っていた。
しかし距離はひらいていくばかり。
遂には父と母を包んでいた光も豆粒ほどに小さくなり、消えた。
また、真っ暗。
また、独りぼっち…
所詮私はあの光溢れる世界には行けないのだ…
力なくペタンとその場に座り込む。
『このまま闇に溶けてしまえばいいのに…』
眉を寄せ、ふっと自嘲的な笑みを浮かべる。