白銀の女神 紅の王



『ふっ……っく……』

孤独と独りぼっちの寂しさに、気付いた時には涙を流していた。


一度堰を切って溢れた涙は止まる事を知らず、それは次第に嗚咽になっていく。





“エレナ”


何も見えない闇の中、自分を呼ぶ声がクリアに聞こえる。

それは闇を切り裂く光のように。

冷え切った心を温めるように。




『誰…?どこにいるの?』

弾かれたように顔を上げるが、やはり周りは闇ばかり。


『お願い…ッ。私を独りにしないで』

闇に向かって悲痛な声を上げる。

すると頬に温かいものを感じた。



それは大きくて温かい手。



気遣うように優しく触れ、熱を分け与えてくれるかのように撫でられる。

けれど真っ暗で、誰か分からない。

しかし頬を包む大きな手に、不思議と涙はスッと止まった。


そしてその手が私の手を掴み、引いていく。



明るい光の元へ――――


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