白銀の女神 紅の王
光へ導いてくれた人は誰…?
見上げるも今度はまばゆいほどの光で見えない。
あまりの眩しさに目をギュッと閉じれば、ふっと体が浮いたように軽くなる。
“目を覚ませ”
エコーがかかったように、頭の中で響く声。
どこかで聞いたことのあるような…
その声に引き寄せられるように、閉じていた目を開けば―――
そこには見覚えのある天井があった。
ここに来てまだ数日しか経っていないが、ここは間違いなく後宮だった。
体が重い……
鉛のように体が重く、動く頭だけで部屋を見渡せば。
部屋の掃除をしているニーナを視界の端に捕らえる。
「ニーナ…」
名前を呼んだその声は見事なまでに掠れていた。
届くか届かないか程の小さな声だったが、ニーナは弾かれた様にこちらを振り向く。
「エレナ様……ッ!」
泣きそうな顔で名前を呼ばれ、掃除道具などそっちのけでこちらへ近付いてきた。