白銀の女神 紅の王
「大丈夫ですか?どこも痛くないですか?」
眉を寄せて苦しげな表情を浮かべて問われる。
声を出すのも億劫で、ただコクンと頷く。
しかし、それでもニーナの表情は和らぐ事はなく…
「けれど、涙が…」
涙……?
頬に手を持っていけば、確かに頬は涙で濡れていた。
あれは夢じゃなかったの…?
「大丈夫。これは…違うから…」
体の異常でそうなっているわけではない事をニーナに伝える。
すると、やっとニーナにいつもの笑顔が戻る。
「良かった……。すぐに、シルバ様を呼んできますね!」
そう言ったかと思えば、後宮の扉を勢いよく開き出て行くニーナ。
ニーナが出て行ってから、数分と経たず、後宮の扉が開く。
バンッ――――
扉を開く力は、ここに初めて来た時よりも荒々しい。
先頭を切って入って来たのは、やはり、シルバだった。