白銀の女神 紅の王



「もう、大丈夫なのか?」

ポツリと出された言葉に銀色の瞳を大きく開く。

眉を寄せるその表情に、何故か心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚える。

一瞬、何を言われたのか分からなかった。



「まだどこか悪いのか?」

何も言わない為、まだ体調が悪いものだと思っているシルバに慌てて首を横に振る。


「大丈夫…です」

掠れた声で言うと、紅の瞳が僅かに揺らぐ。

真摯に見つめるその瞳に何か見てはいけないものを見た気がして、視線を外す。

私の瞳にはシルバがほっと息をついた姿は映ることはなかった。






二人の間に何とも微妙な空気が流れ始めた頃―――



「ほう…お前がエレナか」

静まり返っていた後宮に明瞭な声が響き渡る。

声のする方へ目をやれば白い軍服に身を包み、腰に剣を下げた青年が立っていた。



「あなた…は……?」

ウィルやニーナ達侍女にまぎれていたので気付かなかった。


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