白銀の女神 紅の王
「手が冷たいな。まだ本調子じゃないようだ」
そう言ってデュークに手を両手で包まれる。
「ッ……!」
いきなりのデュークの行動に驚く。
しかしデュークに悪びれた様子や、裏のある様子ではない。
普段からこのように本能的に動くタイプなのだろう。
本当に心配してくれていることが見て取れたから…
その姿を見て少し警戒心が薄らいだ。
本当に良い人なのかも…と。
漆黒の瞳はその色に反して、透き通る様に澄んでいるし、何より嘘がない。
自分に向ける笑顔にも偽りはない様に思えた。
「もう少し休んだら回復すると思います」
デュークに手を包まれたままそう言えば、別の腕が伸びてきた。
「そういうことだ」
その一言でデュークの手を掴み、無理やり引き剥がす。
「後は医師とニーナ達に任せて行くぞ」
見上げればデュークを睨むシルバがこの上なく不機嫌な顔をしていた。