白銀の女神 紅の王
何故かは知らないが、怒ってはいない様子。
それが私を後押ししたのだろう。
それから……と、伏し目がちに口を開けば…
「まだ何かあるのか?」
静かにそう呟くシルバの紅の瞳からは感情が読めない。
無表情だと冷酷さに拍車を掛けるようなシルバの表情に、決心が揺らぐも…
これは…これだけは伝えておかなくてはいけない。
紅の瞳を見据え口を開く。
「すみませんでした…。宴に参加した人、全員の心を読む事が出来なくて…」
すると無表情だったシルバの顔に僅かに驚きの色が加わる。
「次は頑張りますから。次は、絶対に倒れませんから……」
声を絞り出す様にしてシルバを見つめる。
そして一番伝えなければならない事を言う。
「だから……どうか、ジェスには手を出さないで下さい」
今度こそ驚きに見開かれる紅の瞳。
しかし、それは一瞬の事で、すぐにいつもの睨む様な視線にとって代わる。