白銀の女神 紅の王
「全く…子供かアイツは」
ふと頭上から降って来たのは、溜息交じりのデュークの言葉。
“アイツ”とはシルバのことだろう。
「デューク、早くしろ!」
「そう怒鳴るな。すぐ行く」
シルバの怒号にも動じた様子もなく、答えるデューク。
そしてこちらを見下ろし、微笑みながら呟く。
「またな、エレナ。早く元気になれよ」
「はい」
シルバに対して向けていた呆れた表情とは異なり、どこまでも優しく気遣うデュークに、素直に返事をした。
その答えに満足したのか、ふっと笑い、デュークも後宮を後にする。
その背を見つめながら思う。
シルバとデューク、ウィル。
性格も容姿も異なり、まるで接点のなさそうな三人。
けれどそこにはちゃんと信頼関係もあって。
揺らがない絆が垣間見えたような気がした。
そんな三人の背中を、羨望の眼差しで見送った。