白銀の女神 紅の王
「俺の部下は優秀だからな。俺がいなくとも何とかなる」
ハハッと笑いながらそう言うデューク。
この人本当に偉い人なのだろうか…
ニーナの話しによれば王直属騎士団の副団長らしいけれど。
訝しげな視線を向けていると、デュークが動いた。
「さぁ、行くぞ」
そう言ったかと思えば、腕を引かれ、ズンズンと歩いていくデューク。
「ちょ、ちょっと待ってください…ッ!」
有無を言わせず腕を引くデュークに、必死に抵抗する。
侍女たちも相手がデュークだからか、何も言えずあわあわと慌てている。
そんな様子を察してくれたのだろうか。
デュークは進行方向と逆に引っ張る私に、しょうがなく歩みを止め振り返った。
「何だ、まだ何か心配事があるのか?」
その物言いは俺が大丈夫だというのだから問題ないだろ、とでも言いたげだった。
問題は大ありだ。
デュークが任地に帰らなくても良いのかと心配したのは本当だ。
けれど私にとって一番の心配事は…