白銀の女神 紅の王



恐る恐るその方向を見れば、ニーナの言葉にこちらを向いたシルバがいた。

周りにはあの時のように黒いマントを着た男たちを従えている。

どうやらシルバ達もちょうどイースト地区の視察から帰って来たところのようだ。

感情が見えない紅の瞳がこちらに向き、思わず視線を外す。


シルバの許可を貰って行ったのだから、後ろめたいことなどないのに…

そう思っていても、何故かその瞳から逃げたくて俯いた。



「お前たちも今帰って来たのか」

「あぁ」

デュークが問えば、シルバが不機嫌そうに短く返す。



「視察など他の者に任せてこちらに来ればよいものを。こちらは楽しかったぞ、なぁエレナ?」


挑発的な視線をシルバに向けるデュークから問われる。

シルバとデュークの視線が自分に集中する。



「えっ?あ、あの……はい」


突然話を振られたことに驚き、一瞬答えに躊躇ったが、正直な想いを告げる。



「そうか」


一言そう言って、すぐにフイッと顔を反らせるシルバ。




ズキッ――――


その瞬間、胸に痛みが走る。




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